製品情報:技術トピックス

多電源SoC EMI対策用アルミ固体電解コンデンサMAT-CTMシリーズの紹介

はじめに

  通信関連機器、画像処理関連機器が牽引するデジタル技術の進歩には目を見張るものがあるが、一方で更なる進化には、デジタル処理能力向上が不可欠である。デジタル信号処理の基準となるクロックの周波数は、市場の要求から半導体プロセスの進化と共にますます高速になっている。又、デジタル信号処理に使用されるメモリー容量も増大し、アクセススピードもより高速化が求められ、日々新しい仕様のメモリーが開発されている。
  これらさまざまなデバイスの進化とともに、その中心となるSoC(System on Chip)の電源の種類は多岐にわたり、SoCの電源端子数も非常に増えてきている。さらに半導体デバイスの耐圧は低くなり、電源電圧が低くなるにつれて高い電源電圧精度が要求され、電源周辺の回路設計も難しさが増している。それと共にクロック周波数が高くなるためLSIから輻射される電磁波が増えてEMI(電磁妨害)対策が非常に難しくなってきており、電源端子に数多くのMLCC(multi-layer ceramic capacitor)が接続されEMI対策を施してきている。しかし電子機器のコストダウンや品質要求は年々厳しくなり、より以上の改善が求められているのが現状である。
  今回紹介するMAT-C™(Multi Anode Terminal Capacitor)は複数の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ素子を積層し、高容量、低ESL低ESRを両立させたことにより、部品点数を少なくし実装コストを削減できるEMI対策用のコンデンサである。

        MAT-C-1

MAT-Cの特徴

『構造』
  弊社が製造販売しているPC-CON(導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ)の素子を使用し、それらを複数枚積層したものがMAT-Cである。この積層方法と、電極の取り出し方法に特徴があり、それらにより低インダクタンスを実現している。
  図1に構造と外形、内部等価回路を示す。複数のコンデンサ素子の陰極は中心に配置されたスルーホールにて接続され、共通端子として中心電極を含めた外部電極5端子で構成している。陽極はそれぞれの四角形のコンデンサの角に4端子を配置し、それぞれの端子から複数本のワイヤーによりボンディングされ外部電極に接続されている。例えば3電源対応の3素子内蔵されたT60Mでは陰極となる共通GND端子が5端子、陽極端子が12端子(4端子×3素子)の合計17端子のコンデンサである。

        MAT-C-2

『多電源対応』
  近年のSoCは微細化が進み、それに使用されるコア、I/O、DDR等の電源は使用する半導体プロセスや、用途によって、各々違う電圧が採用されている。そのためにPOL(Point Of Load)と呼ばれる別々の電源が必要となり、それぞれにデカップリングのコンデンサを接続している。又、システムが大きくなるにつれて電源端子が数多くなり、EMI対策としてそれぞれの電源端子にMLCC(積層セラミックコンデンサ)を接続する必要がある。システムの大きいSoCでは100個以上ものMLCCが搭載されているものもある。近年では3端子コンデンサを使用しコンデンサ数が削減されつつあるが、未だ部品点数は多い状況である。
  MAT-Cは複数の大容量コンデンサが積層(内蔵)されているため、各電源のデカップリング素子としての機能を果たし、尚且つ、高周波特性も優れているので、多電源のSoCの電源の低インピーダンス化に適している。そのためMAT-Cと少数個のMLCCだけで電源周辺のコンデンサを賄うことが可能である。

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『広帯域な周波数特性』
  SoCのEMI対策用のデカップリングコンデンサとしては、MLCCや3端子コンデンサが使用されているが、電源ラインを低周波数領域から広帯域に亘ってインピーダンスを低くするためには、違う周波数特性を持つ数種類のコンデンサを並列に接続する必要がある。しかし各々の容量と寄生インダクタ成分との反共振により特定周波数でインピーダンスが高くなる事が発生するために注意が必要である。しかしMAT-Cは大容量のコンデンサでありながら低ESLでありインピーダンスが広帯域に低い特徴を持つために、複数のコンデンサを使用する必要が無い。それにより反共振点を考慮する必要が少なくなり、設計を容易にすることが可能である。
  図3に最下層のコンデンサAの4ポートの通過特性を示す。60µFのコンデンサが搭載されていることにより低周波域から高周波域まで広帯域で低インピーダンスを実現している。素子の形状が長方形であり、角に設置された各々の内部電極間の距離が3通りになるため、3種類の通過特性が測定されている。

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電気的特性

   MAT-Cのカテゴリ温度範囲は、-55ºCから105ºCまでを採用しているが、使用環境において特性が安定しているのが特徴である。コンデンサの温度特性は、主に誘電体材料や電解質特性に依存するが、MAT-Cに採用されているポリピロールは電子伝導である事から、イオン伝導である電解液を採用したアルミ電解コンデンサと比較すると環境温度による容量変化が少ない(図4)。又、誘電体である酸化アルミニウムは、電圧印加時における誘電率の変化が小さい材料である事から、DCバイアスによる、インピーダンス特性、容量特性の変化が極めて小さいという特徴がある(図5)。これらの特性は、回路設計のしやすさと共に、設計された最終製品信頼性向上に貢献している。

図6にT60Mの電気的特性を示す。

        MAT-C-5         MAT-C-6         MAT-C-7

MAT-Cを使用する際のメリット

  デジタル処理能力の高いシステムLSIを使用する際は、電源端子数も多いために、EMI対策に数多くのMLCCを搭載する必要がある。それをアセンブリする工程では、部品をマウントする工数や、部品を管理する工数(コスト)がかさみ、工程での費用が多くかかっている。そこにMAT-Cを使用することにより、マウントする部品点数が減りコストダウンが可能である。又、部品点数が少なくなることで、電極を接続する半田付け箇所が少なくなり、半田付け不良や信頼性悪化の要因を少なくすることが可能になる。
  実際にナビゲーションの画像処理LSIに使用した場合、100個以上のMLCCを使用していたシステムでは、MAT-C+6個MLCCでEMI特性が同等以上になり大幅なコストダウンを実現することができた。さらに実装面積を75%も削減できた。

今後の技術動向

  MAT-Cシリーズは、用途に応じて最適なコンデンサを選定して内蔵できる。大きさ6mm□の製品では、最大定格2.5Vで最大100µF、6.3Vで最大50µFまでのコンデンサを複数個内蔵することが可能である。そのために顧客の要求に応じた定格容量を複数個内蔵したMAT-Cを開発、生産することが可能で、新しいシステムのSoCに適したMAT-Cを市場に導入していく計画である。今後は随時、製品ラインアップの拡充を行い、適応市場の拡大を行うべく、より高周波領域での低インピーダンス化、更なる高温、耐湿性の向上による高環境性能品の開発に取り組んでいく。

※本稿は、2015年1月29日発行の電波新聞「ハイテクノロジー」の記載記事です。

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