製品情報:技術トピックス

薄膜高分子積層コンデンサPMLCAP MUシリーズの紹介

はじめに

  電子機器のデジタル制御技術は、スマートフォンなどの身近なモバイル系機器から、交通や通信といったインフラ系機器、宇宙関連まで非常に多岐に渡って拡大傾向にあり、今やデジタル化なしでは我々の生活は成立しえなくなっている。こうした流れはオーディオの分野に於いても同様に広がっており、ハイレゾをはじめとする音源ソース及び再生関連機器、回路のデジタル化が一つのトレンドとなっている。これら関連機器の多くは小形化が行われ、搭載電子部品においては小形化、面実装化といったデジタル回路への適用性と、音質特性との両立が求められている。
  PMLCAPの製品カテゴリーは、フィルムコンデンサであるが、新規誘電体材料の採用により125℃動作温度まで電圧ディレーティングを必要としない高温度保証を実現、更に独自の薄膜成型技術により従来品よりも大幅な小形・大容量化を行った面実装部品として、この種のコンデンサでは従来手が届かなかった分野に市場を拡大している。
  MUシリーズは、新規端子構造の採用により、こうしたPMLCAPの独自性、優位性をそのままに、デジタルオーディオをはじめとした音響用途への適応性の向上を実現した製品である。
  本稿においては、PMLCAP MUシリーズの代表的な特徴的性能として『低歪み』・『実装性』・『安全性』について紹介する。更には、PMLCAPの今後の技術動向についても言及していく。

PMLCAP MUシリーズ概要

    製品規格
MUシリーズ
定格電圧範囲16~63V.DC100V.DC
静電容量範囲0.0001 ~ 22µF0.001 ~ 0.1µF
カテゴリ温度範囲-55 ~ +125℃
製品サイズ1608/2012/3216
3225/4532/5750
3216/3225
MUシリーズ

PMLCAP MUシリーズの特徴的特性

『低歪み』
  小形・大容量の面実装コンデンサとしては、MLCC(積層セラミックコンデンサ)が一般的であるが、誘電体材料であるセラミック自体が持つ圧電効果により、高調波歪み率が高くなる傾向にある。音響機器の回路上に於いてはこの高歪み特性が原音再生を阻害する一要因となりうることから、音質が優先される高級音響機器を中心にMLCCが敬遠されることが多い。
  これに対し、PMLCAP MUシリーズは、真空中での誘電体層と内部電極層の連続蒸着による積層体製造技術により、層間密着性の非常に高い構造をとり、更には圧電特性のない誘電体材料と磁性体を排除した外部電極によって構成されていることから、【図1】に示す通りの非常に優れた低歪み特性を有している。

【図1】
THD+N


『実用性』
  音響用回路の構成にあたって、音質効果を確保するためにディスクリート形状の電子部品が採用されるケースがあり、ディスクリート、面実装の混載基板が使用されることが多い。PMLCAP MUシリーズは構造的に強固な新規電極の採用により、【表1】に示す通り、リフロー、フロー、手はんだといった多様な実装形態に対応が可能であり、こうした混載基板での設計の自由度向上と機器の小形化への貢献が可能となる。
  また、誘電体材料に熱硬化性の樹脂を採用していることから、一般的な面実装タイプの積層フィルムコンデンサと比較して非常に優れた耐熱性を有する。【図2】は実際のユーザーでの実装工程上のトラブルを想定し、はんだごてを5秒間製品本体に接触させた際の外観写真を示す。通常の積層フィルムコンデンサは、接触部が溶解することによってショート故障に至るが、PMLCAP MUシリーズは特性を保持出来ている。


    【図2】はんだコテを5秒間、製品本体に接触
PMLCAP MUシリーズ
フィルムチップコンデンサ
THD+N
→ 特性正常
→ ショート

『安全性』
  音響機器、特に車載オーディオに於いては、電子部品単体としての安全性が重視される。PMLCAP MUシリーズは、後述の通り、自己回復性(セルフヒーリング効果)を有すること、発煙・発火リスクが低いことから、安全性と音質効果を両立させており、ユーザーのリスク軽減に大きく貢献することが可能である。
  PMLCAPの信頼性能のひとつとして、自己回復性(セルフヒーリング効果)がある。コンデンサに瞬間的な過電圧、大電流が印加された場合、欠陥部あるいは弱小部においてジュール熱による誘電体と周囲の電極材の消失により、絶縁性が回復する。あるいは、そこに微少な破壊モードが生じた場合でも、ショートすることなく、ある一定の抵抗値を維持することにより、回路を完全故障から防ぐことができる。

        印加電圧推移

  【図3】、【図4】には、コンデンサの定格電圧を遙かに超える瞬間的な印加電圧の波形と、その電圧が2Ωの抵抗を介してPMLCAPに印加された時のPMLCAPの端子間電圧をモニタした波形を示す。
  【図4】から明らかなように、電圧が印加された瞬間、PMLCAPの端子間電圧は一端下降(絶縁低下)するが、瞬時に元のレベルまで回復(自己回復)する様子が観察できる。

  また、一部の他品種のコンデンサにおいて、過電圧、過電流の印加によりコンデンサが発熱し、発火/燃焼すること、あるいは発煙し、火災の危険性を示すものがあることが知られている。これは、激しい酸化反応をし易い誘電体材料を使用していることによるものである。
  PMLCAPに採用されている誘電体材料は、熱硬化性樹脂でもあり、熱重量減少が400℃近傍より始まることからも耐熱性能が高いことが挙げられる。


        高周波電流印加試験

  【図5】,【図6】には、例として二酸化マンガン系タンタル電解コンデンサ並びにPMLCAPそれぞれに高周波電流を徐々に増加しながら印加した際の挙動について示した。
  ここに示されるように、比較コンデンサは、激しい炎を上げながら燃焼するのに対し、PMLCAPは僅かな発煙をするものの、自身では発火せず、オープン故障に至っている。オープン故障の原理として、内部電極(蒸着アルミ)と外部電極金属間の接合抵抗による局部的発熱からの溶断、もしくは熱による素子の体積膨張からの変形ストレスによる電極間接合が破断することによる。

        電極破断のメカニズム

【今後の技術動向】
  PMLCAP MUシリーズは、16~100Vまでの定格電圧において、E6系列に準拠した静電容量規格でJISサイズ6種(1608/2012/3216/3225/4532/5750)をカタログラインナップしているが、製法上、端子引き出しの自由度が高いことから、顧客要求に応じてLW反転品のような規格外仕様への対応も可能である。
  また、適応市場の拡大を行うべく、更なる耐湿性の向上による高環境性能品の開発に取り組んでいる。こちらは2015年第1四半期のサンプル対応を計画している。

※本稿は、2014年8月21日発行の電波新聞「ハイテクノロジー」に記載記事を基に加筆、修正したものです。

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