製品情報:技術トピックス

産業機器用 パワーフィルムコンデンサ技術動向

印刷はこちらから パワーフィルムコンデンサ

はじめに

近年、地球温暖化問題とその対策としての省エネルギー化は世界的な課題となっている。
また、3月11日の東日本大震災による福島原発事故で各国のエネルギー政策の見直しの機運が高まっており、今後、太陽光、風力発電といった再生可能エネルギーの市場規模は世界的に急拡大すると考えている。
現在、数々の産業機器に於いて、省エネに向けて、きめ細かな制御が可能なインバータ化が進んでおり、使用されるコンデンサとしてフィルムコンデンサが増えている。その理由としてはフィルムコンデンサの持つ、次の特長によるものである。

パワーフィルムコンデンサ
写真①:ルビコン製パワーフィルムコンデンサ

(1)長寿命でメンテナンスフリー
(2)周波数特性が良好で低損失・低発熱
(3)高耐圧特性に優れている
(4)優れた自己回復・保安性能を持っており
        安全性が高い
写真①はルビコン製パワーフィルムコンデンサ(開発・製造はルビコン電子㈱)の一例である。ルビコンでは市場の要求である小型、軽量化、コストダウンを実現しつつ信頼性、性能に優れたパワーフィルムコンデンサの開発に積極的に取り組んでいる。

以下、フィルムコンデンサに於ける「小型化」「低ESR化」「低ESL化」をポイントに説明する。

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コンデンサ構造・等価回路

メタライズドフィルムコンデンサは、誘電体であるプラスチックフィルムに電極となる金属を真空中で蒸着後、蒸着されたフィルムを一定の幅でスリットし、一対で捲回したコンデンサをプレス・熱処理後、内部電極を取り出すためにメタリコン後、リード線などの端子を溶接又は半田付けした構造となっている。
メタライズドフィルムコンデンサの大きな特長として、誘電体に弱点部があったり、過電圧が加わったりした場合など、印加エネルギーやコンデンサ自身が持っているエネルギーにより蒸着金属が瞬時に酸化してコンデンサの機能が回復する自己回復性(セルフヒーリング性)を持っているが、近年では、更にメタライズドフィルムの蒸着膜に保安機能を設け信頼性を上げる構造が主流となってきている。

図①
図①

図①はメタライズドフィルムコンデンサの蒸着構造を表したものであるが、保安機能はフィルム表面に蒸着膜を形成する際に蒸着金属を複数の領域に分割し、その領域毎にヒューズ機能を設け、自己回復の限界を超え絶縁破壊が発生した場合、このヒューズが短絡電流により溶断し、回路からこの領域のコンデンサ部を遮断する。この機能によりコンデンサの絶縁破壊が回避される事となる。
メタライズドフィルムコンデンサの性能は、誘電体であるフィルム自身の特性及び電極となる蒸着金属の種類、抵抗、蒸着パターンにより大きく依存する。

図② メタライズドフィルムコンデンサ断面図
図② メタライズドフィルムコンデンサ断面図

図②はメタライズドフィルコンデンサの断面図である。内部電極である蒸着金属から電極を引き出すためにメタリコン(金属溶射)を施すが、この金属と蒸着金属の接続が十分でないとESRが高くなり電流特性が落ちる。この事からメタリコン技術はコンデンサ特性上重要な要素技術である。

図③ フィルムコンデンサ 等価回路
図③ フィルムコンデンサ 等価回路

図③はフィルムコンデンサの等価回路図である。理想的なコンデンサであれば容量成分のCだけであるが、実際のコンデンサにはIR(Insulation Resistance)があり電極間の抵抗値は無限大ではなく微少な電流が流れる、これが絶縁抵抗である。ESR(Equivalent Series Resistance)はコンデンサ誘電体抵抗分、蒸着及びメタリコンとの接触抵抗、バスバー端子の抵抗などの等価直列抵抗である。

コンデンサに高周波電流が流れた時、式①の様にESRに比例した電力損失によりコンデンサが発熱する。この発熱が大きいと使用上の制限を受けたり、製品の寿命にも影響を与える事になる。ESL(Equivalent Series Inductance)は電極、パスバーなどの配線のインダクタンス成分の等価直列インダクタンスである。このESLが大きいとIGBT等のパワー半導体のスイッチング時に大きなサージ電圧が発生する事となる。

式① コンデンサ発熱式

Pe=I2 RESR【Pe=実行電力(W)  I=コンデンサに流れる電流(Arms)】

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小型化

フィルムコンデンサの体積は、誘電体材料の厚みの2乗にほぼ比例する事から、コンデンサの小型化には誘電体材料の薄膜化が重要となる。
一般的に誘電体厚みを薄くすると、誘電体厚み当たりに加わる電圧(電位傾度)が高くなることから、コンデンサの耐電圧が下がり信頼性が低下する、それを改善するためには蒸着技術が重要となる。
ルビコンでは蒸着技術開発に力を入れており、蒸着面の保安機能パターン、蒸着金属、蒸着抵抗等の最適化などの開発を行っている。
図④は当社の同一定格電圧におけるメタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサの体積推移を、2000年度を100として表したグラフである。誘電体自体の特性改善もあるが、蒸着技術開発などにもよりこの10年間でほぼ体積は10分の1となり、大幅な小型化を実現している。

図④ メタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサ 小型化推移図④ メタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサ 小型化推移

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低ESR化

等価直列抵抗(ESR)は主に蒸着金属及び蒸着金属とメタリコン金属の接続抵抗が支配的である。この抵抗分をいかに少なくするかがコンデンサ設計、製造のポイントである。
パワーフィルムコンデンサの蒸着構造は、前述のように保安機能が付加されたタイプが主流となってきているが、保安機能設計が不十分であると、このヒューズ部分が電流の流れを妨げる事になるためESRが上昇する事となったり、また、万一の保安機能の動作が目論見通り働かなくなる場合がある。
各メーカーでは、蒸着技術開発による蒸着パターン、蒸着金属、蒸着条件などの最適化及び蒸着金属とメタリコンとの接続改善のためのメタリコン金属及び溶射技術開発が進められている。

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低ESL化

平滑用として大容量のコンデンサが必要となった場合には、複数のコンデンサ素子をバスバーで接続してモジュール化を行うが、そのバスバーのインダクタンスによりESLが大きくなってしまう。
電流がバスバーを流れた際に磁束を相殺する様なバスバー配置の最適化を行ったり、バスバーの材質、厚み等の改善による低ESL化が進められている。

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製品ラインナップ

ルビコンでは、産業機器向けパワーフィルムコンデンサとしてそれぞれ特長のある表-1のMPC・MPV・HVCの3シリーズにより幅広いニーズに対応している。
①角型ケースタイプのMPCシリーズ(インバータ平滑、スナバー用)
②円筒形ケースタイプMPVシリーズ(インバータ平滑用)
③モジュールタイプのHVCシリーズ(EV.HEVインバータ平滑用、各種インバータ平滑用)

シリーズ名MPCシリーズMPVシリーズHVCシリーズ
製品MPCシリーズMPVシリーズHVCシリーズ
特長小型・特殊端子形状に
対応可能
円筒形素子形状パラレル素子構造により
大容量化が可能
主な用途各種インバータ平滑・スナバー用太陽光、風力インバータ 平滑用EV.HEV インバータ平滑用
各種インバータ平滑用
主な電圧、
容量範囲
200VAC/1µF ~100µF
1600VDC 0.47µF ~2.2µF
250V~1200VDC /47~1500µF
250V~800VAC/47~1500µF
250V~2000VDC
100~2200µF
カテゴリ
温度範囲
-40 ~ +85℃-40 ~ +85℃-40 ~ +85(+105)℃
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今後の取り組み

現在、インバータ用デバイスはシリコンによる半導体素子が多く使われているが、今後、シリコンカーバイト(Sic)によるデバイスが実用化され、それに使用されるフィルムコンデンサにもさらなる小型、高温、高性能化が求められると考える。
ルビコンでは、それらの市場の要求に対応するため機能性薄膜蒸着技術開発を一層推進し、パワーフィルムコンデンサの高耐圧、小型化、低ESR化及びバスバー構造、材質改良による低ESL化などの開発を積極的に進めている。

※本稿は、2011年8月18日発行の電波新聞「ハイテクノロジー」に記載記事を基に加筆、修正したものです。

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