製品情報:製品技術紹介

薄膜高分子積層コンデンサPMLCAP MSシリーズの紹介

はじめに

 電子機器のデジタル制御技術は、スマートフォンなどの身近なモバイル系機器から、交通や通信といったインフラ系機器、宇宙関連まで非常に多岐に渡って拡大傾向にあり、今やデジタル化なしでは我々の生活は成立しえなくなっている。こうした流れはオーディオの分野に於いても同様に広がっており、ハイレゾをはじめとする音源ソース及び再生関連機器、回路のデジタル化が一つのトレンドとなっている。これら関連機器の多くは小形化が行われ、搭載電子部品においては小形化、面実装化といったデジタル回路への適用性と、音質特性との両立が求められている。
 PMLCAPの製品カテゴリはフィルムコンデンサに属するが、新規誘電体材料の採用により125ºC動作温度まで電圧ディレーティングを必要としない高温度保証を実現、更に独自の薄膜成型技術により従来品よりも大幅な小形・大容量化を行った面実装部品として、この種のコンデンサでは従来手が届かなかった分野に市場を拡大している。
 小形・大容量の面実装コンデンサとしては、MLCC(積層セラミックコンデンサ)が一般的であるが、誘電体材料であるセラミック自体が持つ電圧依存性により、高調波歪み率が高くなる傾向にある。音響機器の回路上に於いてはこの高歪み特性が原音再生を阻害する一要因となりうることから、音質が優先される高級音響機器を中心にMLCCが敬遠されることが多い。
 これに対し、PMLCAPは、真空中での誘電体層と内部電極層の連続蒸着による積層体製造技術により、層間密着性の非常に高い構造をとり、更には圧電特性のない誘電体材料と磁性体を排除した外部電極によって構成されていることから、非常に優れた低歪み特性を有している。そのため、音質改善部品としての評価は非常に高く、各種AV機器やカーナビゲーションをはじめとした、あらゆる音の出る機器の音質向上に寄与するコンデンサである。
 本稿においては、新たにリリースされたPMLCAP MSシリーズの代表的な特徴的性能について紹介するとともに、PMLCAPの今後の技術動向についても言及していく。

PMLCAP MSシリーズ概要

PMLCAP MSシリーズ製品規格
定格電圧10~50V.DC
静電容量範囲102(1,000pF)~225(2.2µF)
カテゴリ温度範囲–55 ~ +125ºC
製品サイズ2012 / 3216 / 3225
耐湿性能保証85ºC 85%RH 1,000時間

PMLCAP MSシリーズ概要

PMLCAP MSシリーズの特徴的特性

『耐湿性能』
 2013年にリリースされたPMLCAP MUシリーズは、小型・高耐熱のチップフィルムコンデンサとして市場での採用が拡大している。しかしながら、耐湿性能保証条件は 40℃95%RHであるため、一部ユーザーからは耐湿性能改善を望む声があった。それを受け、耐湿性能を改善したPMLCAPの開発に取り組み、新たにリリースしたのが今回紹介するMSシリーズである。
 MSシリーズの耐湿性能保証条件は85℃85%RH / 1,000時間であり、大幅な耐湿性能の改善を達成している<図1>。これによって、高い耐環境性能が求められる車載用途や通信・産業機器用途でも採用が拡大している。

<図1>MSシリーズ  85℃85%RH 定格電圧印加での特性変化
<図1>MSシリーズ  85℃85%RH 定格電圧印加での特性変化

『うなり音』
 オーディオ分野ではハイレゾ対応の機器が多く発売され、アナログ信号処理からデジタル信号処理回路の採用が多くなっている。スピーカーを駆動するパワーアンプもアナログアンプからデジタルのDクラスアンプが多く使用されてきている。DクラスアンプではPWL(Pulse Width Liner)信号でスピーカーを駆動し、出力にはインダクタとコンデンサを使用したLPF(Low Pass Filter)回路が使用されている。
 小型機器や車載オーディオなどではスペースの問題から、このLPFには安価なMLCCが採用されることも多い。しかしながら、セラミックスは電歪効果を持つため、大振幅のパルス信号であるPWL信号によってコンデンサ自体からうなり音(鳴き)が発生し、問題となることがある。
 一方、小型面実装タイプのフィルムコンデンサであるPMLCAPは電歪効果を持たない。そのためうなり音を大幅に抑えることができ、機器自体の静音化を実現することができる。実際にコンデンサ単体でのうなり音を比較したデータを<図2>に示す。うなり音はPMLCAPの方が圧倒的に小さいことがわかる。
 PMLCAP MSシリーズは耐環境性能に優れるため、特に高信頼性、高音質が求められる車載向けオーディオ回路のDクラスアンプのLPFに最適なコンデンサであるといえる。

<図2> うなり音比較
<図2> うなり音比較

『特性安定性』
 PMLCAPはフィルムコンデンサとしては小型・大容量の製品であるが、MLCCで見られるような圧電効果は無く、特性安定性に優れたコンデンサである。
 一例として、<図3>にバイアス環境下でのインピーダンス特性の変化を示す。PMLCAPはDCバイアスを印加してもインピーダンス特性は変化しないが、MLCCではDCバイアスによってインピーダンスカーブがシフトすると共に、ある周波数でインピーダンス特性が極端に歪む場合がある。

<図3> DCバイアス環境下でのインピーダンス特性
<図3> DCバイアス環境下でのインピーダンス特性

 また、MLCCでは上記インピーダンス特性が極端に変わる周波数の1/2で、違う周波数成分を発生する非線形な特性を持っているが、PMLCAPではそのような特性はない。実際の例として、<図4>に示す回路においてDCバイアス有無で出力波形にどのような変化が生じるか測定した。入力波形を<図5>とし、「測定コンデンサ」をPMLCAPにした場合とMLCCにした場合での測定結果を<図6>に示す。PMLCAPではDCバイアス有無に関わらず同じ出力波形を示しているが、MLCCではDCバイアスが印加されると出力波形が歪んでいる。PMLCAPは電圧の変化に影響を受けることなく、常に安定した性能を発揮できるコンデンサであることがわかる。

<図4> 波形測定回路図
<図4> 波形測定回路図

<図5> 入力波形
<図5> 入力波形

<図6> 出力波形
<図6> 出力波形

今後の技術動向

 PMLCAP MSシリーズは、10~50Vまでの定格電圧において、E6系列に準拠した静電容量規格でJISサイズ3種(2012/3216/3225)をカタログラインナップしているが、今後サイズと静電容量のラインナップをさらに拡大していく予定である。特により小型化した1608サイズや、大容量領域への製品ラインナップ拡大の要望が多く、2017年中のサンプル対応を計画している。
 また適応市場の拡大を行うべく、更なる高圧品の開発に取り組んでいる。定格電圧160~250Vの製品について2017年中のサンプル対応を計画している。

(ルビコン電子㈱ 技術品証部)

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