製品情報:製品技術紹介

導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの技術動向

はじめに

 アルミニウム非固体電解コンデンサ(以下電解コンデンサと記す)は、安価で小形,大容量が実現できるデバイスとして多くの電子機器に使用されている。しかし、電解コンデンサは他のコンデンサに比べて抵抗が高く、またその特性は温度の影響を受けやすく特に低温域では抵抗の増大と容量の減少が著しいことから、低温域で使用される機器には適したデバイスではなかった。この欠点を補うため,主に電気特性に影響を及ぼす電解液の開発が活発に行われ、現在では、長寿命化,低抵抗化,温度特性などの特性が改善され、性能が向上してきた。この結果、車載機器,産業機器,通信機器など広温度範囲で高信頼性が求められる機器での採用が拡大してきている。
 一方で電解コンデンサの欠点を補うべく導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ(以下導電性高分子コンデンサと記す)も改良が進められている。導電性高分子コンデンサは、電導性に優れた固体電解質を使用していることから温度による特性変化が少なく、低抵抗で高リプル電流に対応でき、電気的特性の経時変化が小さいという特徴を持っている。しかし、従来の導電性高分子コンデンサの耐圧が約20Vと比較的低い電圧であったため、使用用途が限られていた。そこで各社で高耐圧化の技術開発が行われてきた結果、高耐圧の商品が上市され、耐圧が低いため今まで使用できなかった機器への採用が拡大してきている。
 本稿では、ルビコンが独自の技術で開発した導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの技術動向について紹介する。

導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの高耐圧化

 従来の導電性高分子コンデンサはコンピュータのマザーボードなどで大量に使われていたが、一般にこれらの導電性高分子コンデンサの耐圧は20V程度が上限となっていた。このコンデンサは、単量体のエチレンジオキシチオフェン(EDOT)を酸化重合によって高分子(PEDOT)をコンデンサ素子の内部で合成する製造方法で、この重合反応には原料となるEDOT(モノマー)と酸化剤として強酸系鉄化合物を用いていた。
 この重合反応は,コンデンサ特性に少なからず影響を及ぼし,寿命劣化や耐電圧の低下を起こす要因となり、20V以上の耐圧を持ったコンデンサの製品化が困難となっていた。PZA,PAVシリーズ
写真-1 PZA,PAVシリーズ

 また、重合反応に使用された鉄化合物や強酸などは副生成物となってコンデンサ素子内部に滞留し,高温負荷や耐湿負荷等において,漏れ電流の増大や短絡等の現象を引起する要因になってしまう。このようなリスクを回避する方法が種々検討されてきた。
 高耐圧化のためにはコンデンサ素子の劣化を抑制し、高導電性PEDOTの合成と素子内部への充填がこのタイプのコンデンサの製造上の重要なポイントである。また、コンデンサの特性を安定させる安定化剤や反応抑制剤の存在は必要不可欠になってくる。
 ルビコンでは、高電導性のPEDOTを効率よく充填して,コンデンサ素子の高い性能ポテンシャルを維持しながら,さらにコンデンサの安定化剤も含有させる技術によって、25V~63VまでカバーしたPZA,PAVシリーズ(写真-1)を開発した。PZAシリーズはリード線 タイプ、PAVはSMDタイプの商品である。
 PZA,PAVシリーズのPEDOTは重合反応時の残渣,残留鉄化合物や強酸を含有しない高純度のPEDOTを採用し、素子内部での重合反応を伴わないため、従来コンデンサ素子に添加することが難しかった特性安定化剤や反応抑制剤を容易に添加することができ、コンデンサの信頼性が飛躍的に向上した。安定化剤と反応抑制剤は、実使用時に皮膜破損が起きた場合,電解液を使用したアルミ電解コンデンサと同様に皮膜の修復や、特性を安定化させる働きをしている。特性安定化剤の皮膜修復のイメージ図を図-1に示す。

図-1 特性安定化剤の皮膜修復のイメージ図
図-1 特性安定化剤の皮膜修復のイメージ図


 この特性安定化剤および修復成分は、初期電気特性をはじめ実使用や寿命試験においても、特性に悪影響を与える事なく良好な特性を維持するために使用される。過酷な条件を含めコンデンサの特性異常になるまでの間に、この特性安定化剤から放出される修復成分が消費されつくす事のないように十分な配合量を設計している。
 グラフ-1は,63V品の寿命試験のデータ(静電容量変化率,E.S.R.の変化)である。このデータのように長時間電気特性は安定している。
 またアルミ電解コンデンサでは、-25 ºCより徐々に特に-40 ºCを超えた低温では、ESRの上昇・静電容量出現率の減少が見られる。グラフ-2で、ESR(100kHz)の温度特性をアルミ電解コンデンサとPZAシリーズで比較した。PZAシリーズは、-55~105 ºCの温度範囲での特性変化は極僅かである。

グラフ-1 PZAシリーズ高温負荷試験
グラフ-1 PZAシリーズ高温負荷試験

グラフ-2 PZAシリーズと電解コンデンサの温度特性比較
グラフ-2 PZAシリーズと電解コンデンサの温度特性比較

 このようにPZAシリーズは、環境温度による特性変化が少ない,低抵抗,電気的特性の経時変化が小さいなど、従来からある導電性高分子コンデンサの特徴を維持し、高耐圧化を実現したコンデンサである。

更なる高性能化/ハイブリッド技術の採用

 ルビコンでは、PZA,PAVシリーズ(105ºC品)に引き続き、高温度を保証可能にした導電性高分子コンデンサPZC,PCVシリーズ(125ºC品)を商品化し、品種の充実を図ってきた。これらは電解コンデンサより低抵抗,高リプル電流,優れた温度特性を実現したものであったが、表-1のようにサイズが少し大きく静電容量が少ないものとなっていた。そこで小形化,高容量化の検討を進め、PFVシリーズ(写真-2,表-2)を開発した。

シリーズPFV
(導電性高分子ハイブリットタイプ)
PCV
(導電性高分子コンデンサ)
TGV
(非固体アルミ電解コンデンサ)
定格電圧(V)252525
静電容量(µF)330100330
サイズ
(Φ:㎜)
10×10.510×10210×10.5
ESR
(Ω/1000㎑)
0.020.030.12
リプル電流
(µA/1000㎑)
2,0002,000550
寿命
(時間/125ºC)
4,0003,0003,000

表-1 性能比較例(25WV)

シリーズ名PFVシリーズ
サイズΦ6.3×6.1L~Φ10×10.5L
温度範囲-55ºC~125ºC
定格電圧25 ~ 63V.DC
静電容量10~330
保証寿命85ºC 85%RH 1,000時間

写真-2 PFVシリーズ

表-2 PFVシリーズ概要                                写真-2 PFVシリーズ

 PFVシリーズは、PZA,PAVシリーズのポリマー 技術(高純度PEDOT,特性安定化剤や反応抑制剤の添加)に独自開発の機能性液体を付加したシリーズで、いわゆるハイブリッド技術を採用したものである。
 当社の導電性高分子コンデンサは、皮膜修復機能を持たせた特性安定化剤を配合しているが、電解コンデンサで使用している電解液と比較すると皮膜修復能力が小さいため、同じ定格電圧の製品でも電解コンデンサより高耐圧の陽極箔を使用している。このために導電性高分子コンデンサは電解コンデンサに比べて容量が少ないものであった。そこで機能性液体を付加して陽極箔の酸化皮膜の修復機能を強化することで、高信頼性を維持したままで陽極箔の耐圧を下げることが可能となり、電解コンデンサと並ぶ高容量化を実現した。
 この機能性液体は導電性高分子の導電性に影響を及ぼさないため、コンデンサの容量、抵抗(tanδ,ESR,インピーダンス)特性には寄与しない。またPFVシリーズの電気的特性(容量,抵抗)は導電性高分子のみによって現れ、導電性高分子コンデンサの特長である低温から高温まで安定した電気特性を維持している。一方、導電性高分子コンデンサを電解コンデンサで使用されている電解液でハイブリッド化した場合、電解液はコンデンサの電気的特性に寄与するために低温域で電解液のキャラクターがコンデンサ特性に現れる場合がある。当社で試作したハイブリッド製品の温度特性(ESR/10kHz)は、電解液を使用した場合‐25ºC以下で急激な増加が見られる結果となった。(グラフ-3参照)

グラフ-3 温度特性比較
グラフ-3 温度特性比較

 さらに、機能性液体は電解液に用いる溶媒よりも熱的に安定しているため、封口ゴムからのコンデンサ外部への拡散量が電解液に比べて少なくなっている。機能性液体または電解液を使ってハイブリッド化した試作品を、125 ºC中に4000時間放置した場合の透過量を測定した結果をグラフ-4に記した。機能性液体の透過量は電解液の3分の1以下となっている。

グラフ-4 透過量比較
グラフ-4 透過量比較

 導電性高分子コンデンサの故障モードは、導電性高分子の絶縁化によるオープンであるが、機能性液体は導電性高分子の劣化抑制機能も兼ね備えており、コンデンサの高信頼性を実現している。グラフ-5にあるように耐久性試験においてESRの変化がほとんどなく安定していることが分かる。

グラフ-5 PFVシリーズ高温負荷試験
グラフ-5 PFVシリーズ高温負荷試験

終わりに

 導電性高分子コンデンサは、低抵抗,高リプル電流,温度特性や耐久性に優れていることからあらゆる機器で使用されている。特に高耐圧化が進んだことで用途が広がり、省スペース化が求められる電源や、屋外で使用され高信頼性の求められる車載,通信機器,産業機器,照明機器などで採用が拡大している。
 ルビコンではさらに用途拡大を目指し、高容量化,小形化,高耐圧化,高耐熱化,高リプル化,低抵抗化といった市場要求に応える導電性高分子コンデンサの商品開発を進め、ラインアップの充実を図っていく。(佐々木佳典:ルビコン株式会社機能部品設計部)

<ルビコン株式会社機能部品設計部>

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