製品情報:技術トピックス

薄膜高分子積層コンデンサ“PMLCAP”の特徴と活用

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PMLCAPとは

Polymer Multi-Layer Capacitorの名の通り、高分子(ポリマー)上に金属蒸着を行いながら連続的に積層することにより形成した構造を有する表面実装形のフィルムコンデンサです。
ルビコン独自の真空蒸着技術により従来のフィルムコンデンサより大幅な小形化を実現しました。

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特 徴

«構造と等価回路»

薄膜高分子積層コンデンサ“PMLCAP”(写真1)の内部構造を図1に、等価回路を図2に示します。
等価回路において、誘電吸収を等価としたRdとCdは通常の用途では無視することが出来ます。

PMLCAP
写真1 薄膜高分子積層コンデンサ“PMLCAP”(単位はmm)

PMLCAPの内部構造
図1 PMLCAPの内部構造

等価回路
図2 等価回路

PMLCAPは真空蒸着で製造するため、誘電体の厚みが非常に薄く、樹脂フィルムを使用する従来のフィルムコンデンサと比べて、外形が約1/10と大幅に小形化されています。

«電気特性»

PMLCAPの仕様を表1、他の表面実装コンデンサとの比較を表2に示します。
電気的特性は、ポリエステルフィルムコンデンサ(マイラコンデンサ)とほぼ同等です。
積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multi-Layer Ceramic Capacitor)と比べると,圧電効果がないため、うなり音発生が少なく、誘電吸収も小さく、直流電圧印加による容量減少が無いなどの特性を有しています。

表1 PMLCAPの仕様
PMLCAPの仕様

表2 表面実装コンデンサ比較表(電解コンデンサは除く)
表面実装コンデンサ比較表

«耐熱性»

PMLCAPは誘電体材料に熱硬化性樹脂を使用しています。
その熱重量減少開始点は300℃以上であることから、耐熱性は高いものであると言えます。

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電気特性

PMLCAPの特性を、高誘電率系積層セラミックコンデンサと比較します。

«インピーダンス-周波数特性»

パスコンとして使用するときに重要なインピーダンスと等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)の周波数特性を図3に示します。

MLCCとPMLCAPのインピーダンス/ESR-周波数特性
図3 MLCCとPMLCAPのインピーダンス/ESR-周波数特性

PMLCAPはESRと等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)が小さく、MLCCとほぼ同等の周波数特性となっています。

«直流バイアス特性»

パスコンやカップリングコンデンサとして使用するときに重要な直流バイアス特性を図4に示します。PMLCAPは圧電効果がないため、直流電圧を加えたときの容量変動がありません。これは、MLCCに対し特性上の大きな優位点となります。例えば、定格電圧が50VのMLCCをDC25V以上で使用する場合には、実効容量が同じPMLCAPと同じくらいの大きさになることが多くなります。

直流バイアス電圧による容量変化率
図4 直流バイアス電圧による容量変化率

«温度特性»

入力カップリングコンデンサやフィルタコンデンサとして使用するときに重要な温度特性を図5に示します。
-55℃から+125℃における温度係数は、約+520ppm/℃となっています。

温度による容量変化率
図5 温度による容量変化率

«うなり音特性»

静音を求められる機器に使用されるときに重要なうなり音特性を図6に示します。図6(a)は1.4kHzで3Vpeakのパルスを印加したときの音圧レベルです。MLCCに対し-20dB、つまり1/10になります。
 図6(b)は、液晶バックライト回路へ実装し、稼働させたときに発生するうなり音の周波数分析結果の一例です。MLCCの音響雑音は圧電効果によるため、1kHz以上の中音域で大きくなります。PMLCAPはクーロン力によるため1kHz以下の低音域の一部で大きくなっています。人にとって耳障りな雑音は、数kHz帯であり、この帯域で発生する雑音が小さなコンデンサが望まれるため、PMLCAPの使用が有効です。

うなり音
図6(a) 1.4kHz, 3Vpeakパルス印加時のうなり音

うなり音の周波数成分
図6(b) 液晶バックライト回路で生じるうなり音の周波数成分

«誘電吸収特性»

誘電体の分極が瞬時に起きないで時間遅れを持つことが原因で誘電吸収(誘電体吸収ともいう)が悪化します。図7に誘電吸収の測定データを示します。JISでは、放電後の再起電圧は15分後の値になっていますが、ここでは、時間にかかわらず最大値を求めています。

誘電吸収特性
図7 誘電吸収特性

PMLCAPの誘電吸収特性は、ポリエステルフィルムコンデンサとほぼ同等で、MLCCに比べて大幅に優れています。
形状にこだわらなければ、大きなリード線付きポリプロピレンフィルムコンデンサは、さらに優れた特性を示しますが、この容量でこの形状ではほかに代替可能なコンデンサはありません。

«自己回復性»

過電圧パルスが印加されて短絡故障が起きても、短絡部分に電流が集中して発熱し、蒸着金属が酸化して蒸着金属が消失し、誘電体および蒸着金属が飛散して絶縁が回復します。このような自己回復は、蒸着抵抗が高く蒸着膜が薄いほど起こりやすくなっており、そのような構造を有するPMLCAPは安全性が高いといえます。
過電圧パルスを加えて強制的な短絡故障を起こさせたときの自己回復特性を観測した結果を写真2に示します。写真2(a)が186Vpeak、1msecのパルス形状です。これを2Ωの直列抵抗を介してPMLCAPに加えた時の端子間の波形が写真2(b)です。自己回復現象が観測されています。
なお、短絡からは回復しても、絶縁抵抗などの電気的特性は短絡前の状態に回復するわけではないので、信頼性の観点からは早期の交換が必要です。

自己回復特性
写真2 瞬間的な過電圧に対する自己回復特性

«許容リプル電流»

PMLCAPの許容リプルの一例を図8に示します。

許容リプル電流特性
図8 PMLCAPの許容リプル電流特性

«“低漏れ電流”特性»

フィルムコンデンサの特長として、他のコンデンサと比較して低漏れ電流特性に優れています。
図9に16V22μFにおける各種コンデンサ(電解、タンタル、積層セラミック)との漏れ電流特性の比較データを
示します。

漏れ電流特性比較
図9 漏れ電流特性比較

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代表的な用途と使い方

代表的な用途として、高音質の特徴を生かした音響機器、うなり音がほとんどない特徴を生かした電源のパスコン、誘電吸収が小さい特徴を生かしたPLL(Phase Lock Loop)のループフィルタ、低漏れ電流の特長を生かしたエネルギーハーベスト(環境発電)の蓄電用コンデンサなどがあります。

«音響機器»

図10にD級アンプ(デジタルアンプ)に使用したときの例を示します。PMLCAPは入力部分の直流カット用カップリングコンデンサや出力フィルタに使用されます。音質としては、中高域の透明感が増します。また、出力フィルタに使用すると、容量変動がないためフィルタ特性の変動が小さくなります。

D級アンプの入出力コンデンサへの使用例
図10 D級アンプの入出力コンデンサへの使用例

図11には、実際のD級アンプの出力を変えた時の各周波数におけるTHD+N (Total Harmonic Distortion:全高調波歪、Noise:ノイズ) を測定した結果を示します。
オリジナルでは、出力フィルタにポリプロピレンフィルムコンデンサ(630V,0.47μF,17.5×18.0×9.0mm)が使用されていました。このコンデンサを、PMLCAP 35V、1μF (3.2×2.5×1.4mm)、MLCC 50V、1μF (X7R,3.2×2.5×1.8mm)に置き換え、それぞれ測定しています。

フィルムコンデンサのTHD+N
図11(a) フィルムコンデンサのTHD+N

PMLCAPのTHD+N
図11(b) PMLCAPのTHD+N

MLCCのTHD+N
図11(c) MLCCのTHD+N

この結果より、PMLCAPは従来のフィルムコンデンサと同等、MLCCよりも優れていることが分かります。

«バックライト用LEDドライバ 使用例»

誘電体である薄膜フィルムには、圧電効果がないため、うなり音発生が少ない特徴を生かし、大きなリプル電流が流れる電源のパスコンに使用されています。
図12にLEDバックライト用DC-DCコンバータの入力と出力のパスコンに使用する場合の挿入箇所を示します。LEDバックライトでは、調光に可聴周波数のPWM(Pulse Width Modulation)信号を用いるため、MLCCを使用すると、大きなうなり音に悩まされる場合が多くあります。図12では、昇圧型コンバータのため入出力のパスコンに使用していますが、降圧型では入力のパスコンに使用します。

バックライト用LEDドライバの入出力コンデンサへの使用例
図12 バックライト用LEDドライバの入出力コンデンサへの使用例

«PLLのループフィルタ用»

図13にPLLのループフィルタに使用した例を示します。高誘電率系MLCCに比べ誘電吸収が小さいため、ロックアップタイムと呼ぶ周波数切り替え時間が大幅に短縮できます。

PLLシンセサイザループフィルタ用コンデンサへの使用例
図13 PLLシンセサイザループフィルタ用コンデンサへの使用例

«エネルギーハーベスト(環境発電)»

PMLCAPは誘電体に薄膜フィルムを採用する事により、漏れ電流が非常に小さく、しかも従来のフィルムコンデンサより小形大容量である特長を有しています。そのため、微弱な電力を扱うエネルギーハーベスト«環境発電»(図14)の蓄電用コンデンサに適しています。

エネルギーハーベスト ブロック図
図14 エネルギーハーベスト ブロック図


※本稿は、CQ出版株式会社刊「トランジスタ技術」2010年8月号掲載の記事を基に加筆、修正したものです。

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